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    標高100m地点から見た東京のイメージ Microsoft Bing Image Creator にて作成

    関東平野。
    言うまでもなく、日本一広い平野です。
    東京駅から新幹線で1時間近くかかる高崎駅でも、その標高は94mしかありません。100kmも進んでも、まだ標高100mに達しないのですから、いかにこの平野が広いかがわかろうかというものです。
    今回はその「標高100m」に注目してみたいと思います。

    東京の超高層ビルデータベース(2023/2/20閲覧)によると、都内には高さ100m以上のビルが(計画中のものも含め)628もあるそうですので、手っ取り早く100mに達するにはそのうちのどれかに上ってしまえばいいのでしょうが、やはり本物の「大地の高まり」としての標高100mに行ってみたいですね。

    ところで、東京駅の標高ってどれぐらいなんでしょう?
    このシリーズで「基準点」としている「丸の内中央口正面玄関」の標高を地理院地図で調べて見たら「4.0m」だそうです。標高100mまであと96m、どの方向に、どこまで進んでいけば到達できるのでしょうか。

    机上探索編

    さて、東京駅から一番近い標高100m、どうやって探しましょう。
    昔は国土地理院発行の地形図(紙)などで、100mの等高線を目と指で追っていくぐらいしか手段がありませんでしたが、今はありがたいことに、探したい標高の等高線を簡単に表示してくれるWebツールがあります。さしあたり、心当たりとしては次の2つ。

    今回は地理院地図Vectorの「色別標高図」を使って探してみることにしましょう。
    標高100m以上を赤く塗りつぶし、東京駅を中心とした「赤色エリアとぎりぎり重ならないぐらいの同心円」を書き加えてみます。

    地理院地図Vector(国土地理院)の「色別標高図」にて作成(標高100m以上を朱記表示)

    赤色の地域(標高100m以上)のうちで東京駅に一番近いのは、どうやら緑の円で示したエリアのようですね。川崎市多摩区あたりでしょうか。拡大してみましょう。

    地理院地図Vector(国土地理院)の「色別標高図」にて作成(標高100m以上を朱記表示)

    青い線は、先ほどの地図と同じ、東京駅を中心とした同心円です。
    この線から一番近い赤色がどこかを調べれば、それが「東京駅から一番近い標高100m」と言ってよろしいのではないでしょうか。

    さて、それはどこか、と。おや…?

    地理院地図Vector(国土地理院)の「色別標高図」にて作成(標高100m以上を朱記表示)

    お気づきでしょうか?
    緑の円で示したところに、わずかに赤い点が見えるような気がしますが。
    さらに拡大してみましょう。

    地理院地図Vector(国土地理院)の「色別標高図」にて作成(標高100m以上を朱記表示)

    間違いありませんね。「標高100m以上」の赤色です。
    周辺の地図も目視確認してみましたが、これ以上東京駅に近いところには赤色のエリアは見当たりませんでした。
    住所でいうと川崎市多摩区三田4丁目と5丁目の境界あたり。どうやらここが東京駅から一番近い「標高100m」ということで間違いなさそうです。標高100mからの眺めはいかがなものでしょうか、見に行ってみましょう。

    東京駅から一番近い「標高100m以上の三角点」も探してみよう

    このシリーズの第3回で、東京駅から一番近い「三角点」というのをやりましたが、あまりにも街なかすぎて「三角点にふさわしい眺望」みたいなものは得られませんでした。

    標高100m以上ある三角点なら、眺望もちょっとは期待できるかもしれませんね。
    というわけで合わせ技にて「標高100m以上の三角点」も探してみることにしましょう。

    「三角点」の回でお世話になった基準点成果等閲覧サービスで、先ほど見つけた多摩区三田5丁目の標高100m周辺にある三角点を検索してみます。

    出典(画面キャプチャ):基準点成果等閲覧サービス(国土地理院) 一部加工

    赤い星印が、先ほどの「東京駅から一番近い『標高100m』」地点です。
    早速、近くに100m以上の三角点が見つかりました。

    • 三等三角点「生田」標高112.7m
    • 四等三角点「長沢」標高100.8m

    あれ?
    三等三角点「生田」って、星印より東京駅に近いですよね。

    東京駅から一番近い「標高100m」よりも東京駅に近いところに、東京駅から一番近い「標高100m以上の三角点」がある?どういうこと?

    地理院地図の標高表示機能で確認してみましたが、やはりこの場所は標高94.7mと表示されます。
    仮説としては、

    • 高さ18mぐらいの建物の屋上に三角点があって、そこの高さが112.7m
    • ごく狭い場所に、等高線が表示できないぐらいの小さな山があって、その頂上が標高112.7m

    といったところでしょうか。
    おそらく前者でしょうが、現地で確かめてみましょう。
    東京駅から一番近い「標高100m以上の三角点」は、「生田」と「長沢」両方を訪問することにします。

    まとめ

    東京駅から一番近い「標高100m」
    基準点から21.84km 川崎市多摩区三田の丘の上

    東京駅から一番近い「地上の標高が100m以上の三角点」(仮)
    基準点から20.76km 三等三角点「生田」(地上の標高は100m未満かもしれない)
    基準点から22.21km 四等三角点「長沢」(生田が100m未満なら「一番近い」)

    現地訪問編 2022年12月10日

    早朝。
    東京・練馬の自宅を暗いうちに出て、自転車で川崎市多摩区へ向かいます。

    家からだいたい20km。地形図によると、東京駅から一番近い「標高100m」は東に開けた丘の上のようですので「標高100mから見るご来光」を撮るつもりで思いっきり早起きして出発したのですが、途中で道に迷ってしまい、あと4km、多摩川を渡るあたりで夜が明けてしまいました。うーん残念。

    多摩水道橋から見る、多摩川越しの富士山。
    富士山の手前に青く見える稜線は丹沢の峰々、その手前の緑の高まりは多摩丘陵ですね。目指す「標高100m」はこのどこかにあるのでしょう。

    登戸から小田急線に沿って谷間の道を走ります。このあたりの標高はまだ25mほどですが、生田駅の手前で左折すると急に上り坂がきつくなってきました。ママチャリでこれは厳しい…。

    ペダルを踏む足に力を込めて、途中までなんとか上りましたが、やがて行く手に階段が。仕方ありませんね、階段のへりが狭いスロープになっていますので、ふぅふぅ息を切らしつつ、自転車を押して登ります。

    50段ほどを上りきると、平坦でまっすぐな道になりました。このあたりで標高60mを超えたぐらい。進行方向両側が緩やかに下っていますから、この道が尾根筋なのでしょう。広々とした浄水場を横目に走っていくと、行く手に小さな丘が見えてきました。おっ、あれかな?

    地図を確認。
    そうですね。あの丘の上、2軒の家の右側に見える階段を上ったところが、目指す標高100m地点のようです。

    麓まで来てみると、おぅ、結構な急坂です。
    東京近郊でこんなきれいなZ字型のジグザグ坂なんて、なかなかお目にかかることはありませんよね。
    坂の下に、自転車を邪魔にならないように停めさせていただいて、あとはプチ登山です。
    急坂と階段を上ると…。

    標高ぴったり100m!
    こういうとき、地理院地図って便利ですよね。
    さぁ、どんな絶景が広がっているのでしょうか。振り返ってみましょう!

    んー。

    いや、まぁ気持ちの良い景色ではあるんですよ。眼下にここまで頑張って走ってきた道も見渡せますし。でも、両側の木が目隠しになってしまった分、期待したほどではありませんね。
    近くにもっと見晴らしの良い場所はないでしょうか。いったん階段を下りて、右方向の坂を上ってみます。

    そうそう、これですよ、これ!
    東京都庁を筆頭に、はるか彼方に新宿の超高層ビル群が見渡せます。
    東京駅から21.84km、都庁からは16.32km。
    そこまでの間、ここより高いところがないのがよくわかります。

    こちらは西側。
    丹沢の山並みの向こうに、富士山が顔を出していました。

    この標高100mの丘の上には10軒ほどの住宅が並んでいます。西側が開けている家、東側が開けている家など、各戸それぞれ異なる「自慢の眺望」をお持ちなのでしょう。通勤・通学はほぼ毎日プチ登山でしょうし、日々さぞ大変なんじゃなかろうかと余計な心配をしてしまいますが、ここにご自宅を構えた皆さまは、それを補って余りある「素敵な見晴らしのある日常」に価値を見出したのでしょうね。そんな生活も、ちょっとうらやましい気もいたします。

    東京駅から一番近い「標高100m以上の三角点」へ

    さて、次は四等三角点「長沢」に行ってみましょう。

    三角点があるのは、先ほどの標高100m地点から直線で400m西。すぐ近くなんですけど、途中に谷間があるので、いったん標高を30mも下げて、また上り返しになります。
    自転車で急な下り坂は怖いし、その先の上りはとても漕いで進める坂じゃないので歩いて押して進みます。ふひ~(汗)

    坂を上りきったところにあるのが「日本初の民間公園墓地」という春秋苑の正面入口です。地図によると、三角点は入ってすぐの左側、鐘つき堂「天翔の鐘」のある丘の上に設置されているようです。春秋苑はハイキングコースとしても使われているぐらいオープンな感じの霊園ですので、墓参の方のお邪魔にならないように入らせていただきましょう。

    三角点、三角点… っと。
    ありました。これですね。
    四等三角点「長沢」到着です。

    そういえば、肝心の「標高100m以上の三角点」からの見晴らしを撮り損ねてしまいました。
    植え込みの間から覗く豆粒のような家々とその先の山なみから、ここからの景色を想像してみてくださいませ。

    最後に、ここから東へ1.5km、三等三角点「生田」へ行ってみましょう。
    私の仮説では、高さ18mぐらいの建物があるはずですが、果たして…。

    そこにあったのは、専修大学生田キャンパスの1号館。
    高めの土台の上に4階建て。うん、18mぐらいありそうですよね。
    立ち入ることが出来ないのは残念ですが、屋上のどこかに三角点があるのでしょう。

    ふたたび地理院地図で確認。
    三角点は112.7m、地面の高さは94.8m。
    ということで、「東京駅から一番近い、地上の標高が100m以上の三角点」は、ここ「三等三角点 生田」ではなくて、先ほどの「四等三角点 長沢」であるという結論でよろしいですね。

    夜明け前に家を出て、自転車で3つの「100m以上」を回って、まだ午前8時半です。近くの日本民家園岡本太郎美術館にも寄っていきたいけれど、早すぎて開園前ですね。練馬の自宅まで20km、頑張って帰りましょう。長い1日になりそうです。着いたら昼寝でもしましょうかね。

    最後までお読みいただきありがとうございました。


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